数年前、まだ大学生だったときに友だちからお金を借りました。

額は千円で、大した額ではないと思い、急いで返すことはしませんでした。

すると友だちから、早く返せと催促されるようになりました。もちろん真剣にではなく、ちょっとふざけてです。すると私は、それに付き合うことがおもしろくなってきて、返せるときでも返さない、ということをやり始めました。

何日も経ってくると、もう、返さないのが当たり前になってきました。返せるな、と思っても返さないということを、両者承知でやり始めたわけです。おふざけです。

そうしているうち、友人からの千円の催促が、あいさつようになってきました。私と友人との間に、千円の催促が欠かせないものになってきたのです。

そんなある日、友人が財布をなくしました。困っている様子だったのでお金を貸そうとして、どうせなら、と思ってついに千円を返しました。友人もなんだかうれしいような、納得したような表情だったことを覚えています。

それから不思議なことがありました。なぜか、その友人とは徐々に疎遠になっていったのです。たまに会っても、私たちのあいさつがどこかぎこちないのです。

貸し借りがなくなったのですからむしろ仲良くなっても良さそうなものですが、不思議でした。

現在はまったく連絡をとっていません。